光に手をかざして
福田美里さんのZINE「光に手をかざして」を改めて読んだ。「分からないこと」にゆっくりと向き合いたかったーー『フランシス・ハ』の主人公に憧れる著者。ずっと同じ距離感でいられると思っていた友人のウエディングドレス姿に涙を流す著者の、結婚式に出席するためにアレンジされた髪が結ばれた後ろ姿の輪郭から立ち上る、大人の女性になったアンネやアンのような本の中の友人のような薫り。こちらからその顔は見えないが、確かにこの本の頁の中に立っている。

ZINE「光に手をかざして」。作者の福田美里さんは宮城在住のアーティストで盛岡のギャラリーCygでの個展が終了したばかり。TOKYO ART BOOK FAIRにも出展している。
今のわたしも出産し、育児をし、時間はなく、ままならず、挫折しながらも、現実の自分の立ち位置と、夢やどう生きていたいかを少しずつ擦り合わせていくことしかできない。
プロセスはつねに途中であるー世界は時間的であって、すべては運動のただなかにある。あらゆる事物は、異なる状態に「なる」途中である。一人の人間もエジプトのピラミッドも「出来事」なのだ、という千葉雅也「現代思想入門」の一節を思い出した。
わたしも、こんなにまとまった時間がなく、回らない頭で、完成されたものなんて何も書けない、完成されたものでないとSNSですら発表できない、と思っていたが、完成されたものなど世の中にないのだ。すべては途中である。思うような文章が書けなくても、書いてみる。一切の泡立ちのない、透明で安定したものではなく、炭酸で、泡立ち、ノイジーで、しかしある種の音楽的な魅力も持っているような、ざわめく世界。いま生きている現実。そんな途中の状態を書いてみる、それでもいいのだと思えた。
手を止めてしまうのは簡単だけれど、再び動かし始めるまでが難しい。
クリスマスだ。クリスマスメニューの幼児食と1歳からのケーキを作る予定。
最近聴いているもの。岡村詩野さんのクリスマスプレイリスト。
スパンク・ハッピーが配信開始したので。実際高校生の頃こんなことを思っていた。女の子の気持ちがものすごくわかる菊地成孔はすごい。
すでに登録済みの方は こちら