母がひとりの女性に戻るときの音楽
●Wilson Tanner/69
オーストラリア西海岸の町パースの陽光の元で制作されたという本作。寝かしつけの後ストレッチをする時間に流していた。ジャケットのような暖かみのあるオーガニック感があり自然や自分の本来の身体を意識できる。ずっと優しく音色のいいアルトサックスだと思っていた楽器が実はクラリネットだったと最近知りました。クラリネット、ピアノ、ギター、全編を覆う柔らかなシンセが思考を放棄させる。似たようなアンビエント作品を聴いてもやっぱりこの作品に戻ってきます。子どもと離れた休憩時間、ヨガやストレッチの時に非常にお薦めのメディテーショナルな盤。
●Shabason&Krgovich/AtScaramouche
行ってみたら定休日だった店の前でさあこれから何しようか、そんな音楽。営業時間前のスーパーの看板、あれもしようこれもしよう、と思っていたのになんだかセンチメンタルな気分になって過ぎてしまった天気のいい昼間、小学生たちが下校してくる15時。メロウで、けれど必要以上に情緒的にならない。何もない、何もしていないのだけれどもそこに些細な情緒を見出すこの盤。ぽっかり空いた日中の時間、何もしなくてもいいのだ、何も進まなくてもいいんだよ、と語りかけている。
●HOMESHAKE/Helium
日中よく聴いていました。R&Bとインディーロックが融合しているのだけども、令和のベッドルーム・ポップ感、イケてる感じとSNS時代の内省的な自意識があり、育児をしていて流行や外の世界と断絶された日々を送る中、今が令和4年であることを思い出させてくれる。時間・場所問わず聴ける盤。
●Fuubutsushi/Natsukashii
子どもが生後2か月くらいの夏、お昼寝の時間に別室で聴いていました。ミルクの匂いとガーゼのコンビ肌着にくるまれた赤子の背中の汗、カーテンの向こうの真夏の陽光をクーラーの効いたリビングから別世界のように見ている午後。いっときの休憩、だけれど二度と戻ってこない夏。
●Texas3000/tx3k
東京拠点のオルタナティヴ・ロックバンド「Texas 3000」。2023年にTwitterの音楽ファンの間で話題になっていたので聴いたらものすごく良い。日本のオルタナティヴロックバンドを聴くなんて10年ぶりくらいではないだろうか。個人的にソニックユース、ダイナソーJr.を想起させられる無秩序感、轟音のギター。歴代オルタナティヴロックを経て令和を迎えた脱構築感もある。何も生産的なことをしていない自分に何かを生み出そうというクリエイティヴな衝動を復活させてくれる、そんな盤だ。
あけましておめでとうございます。新年早々言葉にならない出来事が続いていますね。やはり自然には逆らえません。同じようにわたしたちの生きる力、子どもが自分で育っていく力も自然のものなのだから思っているよりもずっと強いのかもしれません。

液タブをひっぱりだしてWilson Terner/69のジャケットを描いてみました。下手なりに気分転換になります
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