本は読めないものだから心配するな

「いつか読める時が来るってほんと?いったい何年後?」
maosoir 2023.12.15
誰でも
「母の友」8月号(福音館書店)

「母の友」8月号(福音館書店)

母の友8月号冒頭に「もしかしたら本と聞いて胸にトゲがささったような感覚を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。小さな子と暮らす日々、書店に行ったり、本を開いたりする時間はないのだが……と。」とあった。本と聞いても映画と聞いても胸にトゲが刺さったような気持ちになる。好きなタイミングでトイレにも行けず、座って茶碗を持ちご飯と味噌汁を食べることすら出来ないのに、本や映画なんてとてもじゃない。数ヶ月前に唯一ようやく手に取るようになったのが雑誌「母の友」なのだが、読んでいると連載している作家さんやコラムニストさんの本、言及されている本などをスマホのAmazonアプリで検索することがある。しかしそれは大体寝かしつけ、夕飯の片付けが終わった後の僅かな時間でのことなので、すぐにこんなこと調べている場合じゃない、ストレッチをして明日に備えて睡眠を取らなければ、夜泣きがありませんように、となり9割以上購入して読むまでに至らない。タイトルと表紙、Amazonのレビューだけ知っていて内容を読んでいない本が日々増えていくのである。

それでふと思い出したのが岡島豊樹著「ソ連メロディヤ・ジャズ盤の宇宙」だ。これは発売当時音楽ファンの間で(いやジャズファン、いやアバンギャルドファンの間でだけかもしれない)大変話題になった本で、季刊ジャズ批評元編集の岡島氏によるソ連時代のロシアのジャズのディスクガイドなのだが、何にせよソ連時代のジャズ、この令和においてもSpotifyでもApple MusicでもYouTubeでも聴くことができないものばかり掲載されているのだ。レビューを読み、これはどんな音楽なんだろう?と空想するレコードが多すぎるディスクガイドーーと当時話題になっていた。

いまの私と本の関係はまさに空想ディスクガイドである。表紙とタイトル、Amazonレビューから勝手に内容を空想し、こんな内容かもしれないと予想しながら今日も寝落ちする。

しかし、本もソ連のジャズの宇宙も逃げて消えてしまうわけではなく、ただずっとそこにある。数年後、数十年後巡り合うかもしれない。だから悲観することはないのだ。と思えるのは余裕のある時だけで、大概は「いつか読める時が来るってほんと?いったい何年後?」と思っている。

子どもの昼寝中などリラックスしたい時Spotifyで音楽を流すことがあるのだが、専ら環境レコーズで紹介されているものから選んでいる。自宅のレコードプレイヤーはTechnicsもポータブルも埃を被っている。

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